この建物は、コンクリートやスチール素材の魅力をそのまま活かした斬新な構造体で、内部と外部の理想的な親和状態を追求した建物です。生活や仕事、睡眠などの機能の分離があいまいで、プライバシーを排除するような特徴を持っています。これは、当時のブラジルで一般的であった「個人主義とプライバシー」という概念への挑戦でした。ブタンタンの家は、格差のある社会を改革していこうとするパウロの強い精神を反映したものであったことが読みとれました。
このように、建築とは独立した美的価値に留まらず、その国の歴史や政治、宗教といった様々な時代のコンテクスト(社会的背景)を反映するものと考えられます。今回は、ブタンタンの家と思想との強い結びつきから、あらためて建築の持つ意味について考える機会となりました。
プレゼンテーションを通して得られる様々なみかたや考えをゼミの仲間で共有すると同時に、住宅の新たな価値や可能性にふれることができる機会は、常に多くの学びを吸収できる有意義な時間です。
写真は、『世界現代住宅全集』(二川由夫,エーディーエー・エディタ・トーキョー)から引用しました。(T/T)
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時代時代の社会がもとめた空間とは、どのようなものであったのでしょうか。
世界の住まいにふれ、今日の「真に豊かな生活」について考えてみませんか。