ライフマネジメント研究室では、今年度埼玉県庁と提携し、秩父地域とその物産をアピールするための「ちちぶカクテル」を開発することになりました。そこで、秩父地域の魅力の発掘とカクテルのモチーフや造形についてのインスピレーションの獲得のため、この7月に1泊2日で秩父地域を巡る現地視察を行いました。今回はその後半部分についてお伝えいたします。
◎フルーツファーム かわご園(皆野町)
宿泊地からバスでブドウを主に栽培している「フルーツファーム かわご園」に向かい、ぶどうについてのお話を伺った後、農園見学を行いました。
まず、ヒムロットや巨峰などの代表的品種の他にこの地域でしか栽培されていない「ちちぶ山ルビー」(写真下)など、多くの種類のぶどうについて詳しくお話を伺いました。ぶどうの蔓の性質、寿命、栽培に適した土壌や、これまでのぶどうの品種のトレンドについてのお話をたくさん聞くことができ、おいしいぶどうはなぜおいしいのかについての理解が深まりました。
次に農園内を見学すると、まだ赤くなっていないブドウが多く、これから赤く実り、甘みが出てくるそうなので、これからの季節が楽しみです。(野口)
◎県立自然の博物館(長瀞町)
長瀞町にある県立自然の博物館に向かい、主に秩父市の地形について学びました。
館内には埼玉県全域の巨大な立体地形模型があり、東は平野、西は山岳地帯と東西で大きく異なる地形をしていることを実感しました。また秩父地域に源を発する荒川がたくさんの支流を集めて東京湾に注ぎこむ様子を秩父から順に目でたどることができました。主な源が群馬県にある利根川も1本の支流が皆野町に発しているのもわかりました。
秩父ははるか昔は海底にあったそうで様々な岩や地形が見られました。中でも私の印象に残ったのは変成岩についてです。広域変成岩は、大陸と海洋の2つのプレートが押し合う場所でつくられます。入り込んだときに付近にあった岩を巻き込んで押し潰されることで出来たのが石灰質片岩や赤鉄片岩などです。化石を観察するのにはすごく適した土地で、研究者の方にも有名で、秩父地域へはよく観察や研究をしに訪れるそうです。(藤井)
◎荒川ライン下り(長瀞市)
博物館からバスで、長瀞市の荒川に向かい、そこでライン下りを行いました。見学日当日はとても気温が高くライン下りにはピッタリの日でしたので、ゼミ生全員が始まる前から胸を躍らせていました。
全員同じ船に乗って、いざ出発。約3キロメートルあるコースを15分ほどで進みます。急流スポットと呼ばれる川の流れが早い場所では、水が跳ねてくるほどの勢いで迫力満点。一方、流れの落ち着いた場所では、木立の中の光の揺らめきを目にし、川の流れる音を耳にして癒されました。このように場所ごとで自然の表情が変わることも楽しかったです。
太陽が照りつける暑さの中の川下りは、とっても気持ちが良かったです!忘れられない良い経験になりました。このライン下りもカクテルのモチーフにしたいと考えており、体験で得たこの感覚をどうカクテルで表現するかが思案どころです。(竹部)
変わった形をした石や地形などについて船頭による紹介があった時は、先ほどの博物館で岩石について学んだばかりだったので、頭の中でそれと突き合わせて岩石名を言い当てていくのが面白くて、川下りと地形の答え合わせで2倍楽しむことが出来ました。博物館へ行ってから川下りをするというこのやり方はこれから秩父に行かれる方へお勧めします。(藤井)
◎長瀞屋
荒川ライン下りで自然を堪能した後は、長瀞屋さんで秩父地方に伝わる郷土料理のおっきりこみをいただきました。「おっきりこみ」は「ちちぶカクテル」で表現したい秩父の物産の一つです。しかし、誰も今まで食べたことがなかったので、外見を観察し、食感を確かめるため、試食してみることにしたのです。
おっきりこみは幅広うどんを煮込んだものであり、麺は太くもっちりとしていて、味はさっぱりしていました。季節のお野菜もたくさん入っていたため食べ応え満載でとてもおいしかったです!
しかし、おっきりこみのこの風合いをカクテル化するのはなかなかの難題です。 (田中)
◎武甲酒造柳田総本店(秩父市)
次に、「武甲酒造柳田総本店」を見学しました。ここでは、お店の歴史や日本酒についての説明をしていただいた後、12種類もの秩父のお酒を利き酒させていただきました。
築210年のお店の建物は、国の登録有形文化財に登録されていることや、お店にある仕込み用の井戸水は、平成の名水百選に選ばれた武甲山の伏流水であり、水質も厚生労働省の基準の10分の1であることから、秩父の災害用井戸として認定されているだけでなく、訪れた人が自由に持ち帰って良いというお話を聞いて、地域に根ざしたお店であると感じました。実際に武甲山の伏流水を飲んでみたのですが、冷たくて、暑い日にぴったりでした!
また、日本酒の知識として、日本酒の味は、①お米の品種、②お米の磨き度合、③仕込みの内容で変化することや、日本酒を選ぶ時は「何と合わせて飲みたいか」で決めることなどを教えていただきました。
12種類ものお酒の利き酒では、普段飲むことのないような上質なお酒を飲むことができ、ゼミ生全員(お酒が好きな人は特に)とても楽しそうにしていました。 しかし、今回の訪問はそれが主目的ではありません。利き酒の中に日本酒を使用した「梅酒」と「ゆず酒」があり、ゼミ生の間では「ゆず酒」が全体の中で最もおいしいという声が大きかったことから、果汁と日本酒とのミックスが若い女性向けの新たなおいしさを産むということを実感できたのが成果でした。(福島)
◎全体の感想
今回の視察で、秩父地域の様々な伝統を知り、また今に受け継がれている人々の思いを聞くことができました。これにより、「ちちぶカクテル」に取り入れるべき秩父地域の魅力のポイントをいくつも感じ取れたのではないかと思います。(北澤)
今回の現地視察は、秩父地域のすべての町を周り、秩父という土地を様々な施設で学び、様々な景色に触れ、体験し、「ちちぶカクテル」を開発する上でこの上ない経験となりました。各施設の方々はもちろん、事前準備、当日のガイドをお引き受けいただいた自治体の方々をはじめとする皆様のご協力があってこそ、とても楽しく、また学び多き有意義な2日間となりました。この恩を返せるよう、これから「ちちぶカクテル」の開発を頑張ります。さてさて、どんなカクテルができあがるか、請うご期待!(來田)