ライフデザイン学科 研究室ブログ LABORATORY BLOG

古民家カフェ探訪 第4弾
2021年10月18日

 ライフマネジメントゼミでは、ライフデザインの理念を空間として象徴しているような古民家カフェを訪れ、オーナーの思い、インテリアへのこだわり、食への配慮、地域とのかかわりなどを尋ねるプロジェクトを開始しました。そのシリーズ第4報をお届けいたします。


◊♦ senkiya(埼玉県川口市)♦◊

 

今回訪れたのは、埼玉県川口市鳩ケ谷にある古民家カフェ senkiyaさん。家業であった植木屋を改装して古民家カフェとしてオープン。昔ながらの木造一軒家を改装した木の温もりに包まれることができます。  

 senkiyaさんは「シンマチ」と呼ばれる界隈の中にあり、senkiyaさんを含め、様々なお店が集まり協力して賑わいのある街を目指しています。               

 店主の高橋さんに、カフェに込められた思いやこだわりについてインタビューを行いました!

 

🔶どうしてsenkiyaを始めたのですか?

 私は、植木屋「千木屋」の息子として生まれました。「千木屋」は、世代交代の度に得意とする植物の種類を変え、販売していました。私は花に注目し、花の専門学校へ通いました。そこを卒業した後は、1度花屋に就職し修行を積みました。ある日、専門学校の同級生が就職した栃木県黒磯という街に遊びに行きました。そこで、衝撃を受け、地元の川口にも黒磯のような街を作りたいと考えるようになり、その街で実際に働いたりして様々な経験を積み、senkiyaを始めました。

 

🔶黒磯という街に衝撃を受けたとありましたが、どこに魅力を感じたのでしょうか?

 黒磯の街は、栃木県内でもあまり有名ではなく、わざわざ訪ねていく人はほとんどいないような街なんです。しかし、私が訪れた一画は、「1988 CAFE SHOZO」というカフェを中心に小さなマチのように様々なお店があり、人々で賑わっていました。私が育った町、川口市鳩ケ谷も、人がわざわざ訪ねるような場所ではありませんでしたが、地元の人が、友達が来たときに自信をもって案内できるような街にしたいという思いと重なったのが、特に魅力を感じた部分かもしれません。

 

🔶お店で運営する中で大切にしていることは何ですか。

 私たちは、いろんな人に来てもらうきっかけをお客さんに与えたい。また、子どもたちに色々な経験をさせる場所にしたいと考えています。

 例えば、豊かな想像力を持ち、挑戦する子どもたちを育てるという目的の為、子ども向けのワークショップを開催しています。先日、「喫茶ひとつぼ」という企画で、小学生を対象に店長体験を行いました。体験の中で嬉しそうにしている子どもたちを見て、今は小学生くらいでも10年後には次のここのスタッフになってくれるかもしれないと思っています。

 

🔶こだわっていることは何ですか?

 何の仕事をしているか聞かれた際に、senkiyaをしていると答えたい。ここでいう、senkiyaは、カフェ・雑貨・お菓子屋・ギャラリーなどの様々なことをやるコミュニティです。

 senkiyaが単なるカフェではなく、その中に様々なコミュニティ機能を含んだ一つの街のような存在であるという認知が広まってほしいと思っています。

 

🔶内装のこだわりはありますか。

 1番はやっぱり建具ですかね。「1988 CAFÉ SHOZO 」で働いていた頃から古い家具・建具が好きで、senkiyaにも取り入れています。椅子は私立の小学校で廃棄予定だったもの(理科室で使うような椅子)を使用しています。

 

 外に面している部分に使っている建具は、元々のこの建物のもので、中で使っている建具は、他の場所で壊される予定の建物からもらってきたものです。いまも解体されるような建物を見つけるとお願いして家具・建具をもらったりしています。

 古い家具・建具のストックが多くなってきたため、現在はこれを「セブンアート(跡)」で販売しています。「セブンアート」とは、senkiyaから1キロほど離れた場所にあるセブンイレブンを改装し、友人と作った建物です。現在、4店舗(カフェ・古材屋・木のお店・レコード屋)展開しています。

 

🔶小さいお子さん、学生へ向けての思いは?

 黒磯のカフェに訪れる学生を見て、「学生時代からこんなに素敵な場所で過ごせるなんていいな」と感じました。そこで、この街でも黒磯のように学生に素敵な日常を味わってほしいという思いをもっています。また、senkiyaに訪れた子どもたちが、将来senkiyaに憧れて「ここでお店をやりたい!」「何か楽しいことがしたい!」と言ってもらえるようなきっかけになることを願っています。

 

🔶 senkiyaメンバーの特徴などは?

 ここにいるメンバーの条件としては、「40歳で定年」というのがあります。これは40歳で店を辞なければならなくなるというよりも、40歳になった時に次の段階に踏み出せるように背中を押すという思いを込めたものです。

 3年前にここを出ていったメンバーは、みんなそれぞれ次の段階に進んでいます。観葉植物のお店をやっていた人は、さらに大きなハウスで観葉植物を育てていたり、建築事務所をやっていた人は現在、建築事務所とカフェが併設した場所を利用して活動していたり…。

🔶最近は何か新しい取り組みはしていますか?

 「senkiya新聞」を発行し、地域の情報を発信する取り組みを始めました。例えば、空き家情報を載せたりすることで、その場所を活用して何かやろうよ!と、楽しいことや面白いことが広まっていくのを促すことを狙いとしています。

 

🔶今後の目標ややりたいことは?

 将来的には「まち」を作りたいです。自分の生活圏内に面白いことを増やすことで、今まで東京に依存していたことを地元で解決したいと考えています。

 また、自分の地元に友人を連れてこられる場所があればいいなと。東京を案内するだけでなく、まずは地元を紹介できるような、そんな誇れる場所をつくることを目指しています。

 

 

🔶貴重なお時間を頂き、またたくさんの素敵なお話をお聞かせ頂いて、ありがとうございました。

 

 

🔶インタビューを終えて

 ライフデザインの理念に照らしてみると、senkiyaさんでは、味わい深い古民家や古い家具をうまく活用することで「文化的・自然的豊かさ」を実現していると感じました。さらに、カフェを起点に人を育て、人と繋がりつつまちづくりの輪を広げていく活動は、街全体に「社会的豊かさ」と「文化的豊かさ」を実現するための「実践」にほかならないと思いました。

 senkiyaさんのまちづくりの原動力は「面白さ」ということのようです。面白さを東京に求めていた人たちを地元に振り返らせるためのワクワクするような面白い仕掛けを考える。ここに、ただ古いものを大事にするだけにとどまらないsenkiyaさんの可能性を感じます。

 みなさんも、senkiyaさんにワクワク感を分けてもらいに、出かけてみませんか?

 

聞き手:鈴木・加藤・北林

訪問日:2021年9月25日