ライフデザイン学科 研究室ブログ LABORATORY BLOG

古民家カフェ探訪 第1弾
2020年12月17日

 ライフマネジメントゼミでは、ライフデザインの理念を空間として象徴しているような古民家カフェを訪れ、オーナーの思い、インテリアへのこだわり、食への配慮、地域とのかかわりなどを尋ねるプロジェクトを開始しました。そのシリーズ第1報をお届けいたします。


♦◊ UP COFFE (埼玉県さいたま市) ◊♦

 今回、訪れたのは、埼玉県さいたま市大宮氷川神社の参道にある「UP COFFE」さん。築50年の古民家をリノベーションして、現代的デザインを取り入れた地域密着型の古民家カフェです。店長の溝口さんに、カフェに込められた想いや、ライフデザインの考えと共通している部分について、インタビューしてきました。

   

  • このカフェのこだわりは?

 ターゲットをカフェの近辺に住む家族連れに絞っているため、ママやお子様も安心して使えるところに最もこだわってお店を作った。

 お店を開店させる前に、近隣にどのような人々が住んでいるかマーケット調査をしたところ、30代~40代のファミリーが一番多かった。このような方たちにいかに愛してもらえるお店を作るかを意識して、内装も考えて作った。

 

  • ホームページに“ママ的サスティナブル”と書かれていたが、ママ的サスティナブルの大事なところは?

 ママたちが過ごすカフェという空間の中でいかにサスティナブルを取り入られるかに苦心している。例えば、カフェで提供しているドリンクに、天然由来原料で作られた「サトウキビストロー」というストローを使用している。いずれはストロー以外に、ドリンクのカップの蓋もプラスチックじゃないものを導入したいと考えている。意識的にプラスチックを使わないようにと考えると、何から始めたらよいかわからないという意見をもったお客様が多く、サスティナブルを取り入れることは難しそうに見えるからこそ、カフェで過ごすことで自然とそれに気づいていただけるよう、工夫をしている。

 お客様との会話の中で、「実は天然由来原料を使ったストローですよ」と話しかけることで、ご自分が今、環境にやさしい行動をしているのだと気づいていただけるように、コミュニケーションも大事にしていきたい。

 

  • この場所にカフェを作ろうと思った理由は?

 緑豊かな場所にお店を出したいというのが、一番の理由だった。たまたま、氷川神社の参道沿いに物件を見つけて、築60年の平屋で、戸建てのカフェを作れるところが、魅力的に映ったのがきっかけ。

 

  • 「誰もが笑顔になれる空間」というコンセプトに込めた思いとは?

 これが使命だと思っている。客様が笑顔になって、自分の居場所としてここを認知してもらって、日常的に使ってもらうことが、来てくれた人を幸せにできることであると考え、このコンセプトを作った。

 カフェは空間やドリンクの提供だけではなく、人が提供するサービスも含めて、空間と体験の提供だと思っている。自分も2歳の息子がいるが、子どもを安心して連れていけるお店がないと思ったことがきっかけで、ママが子どもを連れて安心して行ける場所を作りたいと考えた。

  • ビーガンスイーツにしようとした理由は?

 健康志向の方がビーガンを選ぶという場合もあるが、お子様連れのお客様が子どもにも安心して食べさせられることを狙いにしている。お客様の中には、子どもが牛乳や卵アレルギーをもっていて、好きなお菓子を食べることができない方もいる。そのような子どもにも、自由にお菓子を選んで食べてもらえるようにという思いが込められている。

 

  • 店内のレイアウトのこだわりは?

 お店は16坪あるが、本来ならもう少し席をつめられるところをあえて16席にしている。小さいお子様連れのお客様が来店した場合に、ベビーカーはたくさんの荷物を積んでいて、畳むのがかなり大変なので、店内の全ての通路を、ベビーカーを畳まずに通れるようにしている。トイレの間口もベビーカーの幅より広いサイズにし、ベビーカーも一緒に入れるようにした。さらに、キッズコーナー、授乳室など、私自身が子育てを経験した際に欲しかった空間を取り入れた。

  • 窓のサッシが床より高くなっているが、本来はこの高さに床があったりしたのか?

 床を取り除いて高さを揃えてコンクリートを打った。もともと2DKの物件で部屋によって床の高さが違う変わった物件だった。ベビーカーをスムーズに動かせるようバリアフリーの仕様にしたかったため、床全部を取り除いて水平を取れる高さでフラットに仕上げた。

 屋根にも一癖あり、おそらく雨漏りか何かが原因だと思うが三角屋根の上にフラットな屋根を被せたようなデザインになっていた。なので、天井も床も取り除いた、スケルトンの状態にしてからスタートであった。

  • 天井も床も取り除いてまで、古民家で仕上げる理由があったのか?もうすこし、例えばプレハブ賃貸のような物件もあったのではないか?

 赤ちゃんが泣いても子供たちが騒ぐことを考えると、ビルインテナントだと上下階のお店に気を遣ることが必要だ。そこで、環境と空間の作れる物件を最優先に探していたところ、住宅地というわけでもなく周りが開けている土地で、参道に沿っていて、四季を感じられるようなこの物件が見つかり、築60年は正直、古いからどうかとも思ったが、またコロナ禍という時期ではあったが、この物件は逃してはいけないなと思ってここに決めた。元々古民家を求めていたというわけではない。

 

  • テーブルの上に飾られているものは?

 季節の花で、月に一度くらいはお花を全部変えている。自分でどこかに買いに行くわけではなく、地域のお花屋さんにお願いをしてお花を持ってきてもらい、一緒に選んでいる。

  • 他にも地域の方々との繋がりがあるのか?

 そのお花屋さんと今度、スワッグ作り(花や葉を束ねて壁にかける飾りのこと)をする予定。定休日に貸切で。ゆくゆくコロナが落ち着いたら、毎月のお子さんの誕生日会をキッズパーティーのようにやろうと考えている。元々、ワークショップのようなものを開けるようなお店を作りたいと思っていた。この真ん中のビックテーブルはそういう用途のためにセレクトした物である。

 

 色々やりたいことは有るが、コロナのこの状況で難しい。段々とやっていけたらなと考えている。そして段々と頭の中で思い描いていたお店に近づけていけたらと考えている。

 

  • 貴重な時間をいただき、また沢山の素敵なお話をお聞かせいただいて、ありがとうございました。

 

〇インタビューを終えて

 ライフデザインの理念である「社会的豊かさ」や「自然的豊かさ」の価値がこのカフェでは体現されていると感じました。

小さな子供連れの母親に優しい空間であり、地域との交流を大切にしているため、モノではなく、その空間で過ごしていただくためのサービスやコミュニケーションを大事にされていることが分かりました。

 また、サトウキビストローによって、そこに来た人々が自然とサスティナブルに貢献できるような仕組みになっており、人に優しいだけでなく、環境にも優しいカフェでした。

 お近くにお住いのみなさんも、是非訪れてみてください。

 

聞き手:井上、小原、手計、松山

訪問日:2020年11月20日