ライフデザイン学科 NEWS

ライフデザインとSDGs
2022年3月17日

 近年、SDGsは、その言葉を見聞きしない日がないくらいの話題となっており、また教育にも積極的に取り入れられているので、すでに皆さんにとってもなじみ深い言葉となっていることでしょう。
 SDGsは「持続可能」な社会の構築を目指すための目標設定ですが、「持続可能」といえば、私たちのライフデザイン学科は20年前の設立当初(2002年)より、「自然との共生」を大きなテーマとしてきたので、SDGsは決して目新しい発想ではありません。
 しかし、SDGsは明確な目標を立てていて、進むべき方向を「見える化」しているところが画期的ですので、一度ライフデザインとSDGsの関係を整理しておきたいと思います。

ミライちゃん

 

ご存じの通り、SDGs は2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」において設定された、17項目からなる持続可能な開発目標(SDGs)のことです。では、これらの目標はライフデザインとはどのような関係にあるのでしょうか。

出所:外務省HP

 

ライフデザインとは?
 その前に、ライフデザインとは何かを説明しておかなければなりませんね。ライフデザインとは、一言で表現するなら、「日本人の未来のあるべきライフスタイルを構想する」ということですが、もう少し詳しく言うと、「これまでの大量消費・大量廃棄型のライフスタイルを脱し、自然との共生、他者とのつながり、モノの美の享受、個人の生きがいを獲得し、以って高い生活の質(QOL)=“真の豊かさ”を実現するような新しいライフスタイルを構想すること」であり、そこでは持続可能性が強く意識されていることを理解いただけると思います。

ライフデザインが取りあげるライフスタイルは、私たちの着る・纏う、食べる、住まうという生活を、選択する、買う、作る、直す、管理する、捨てる、譲る、売るという行為をもって営むことや働く、遊ぶといった活動から、さらにはある場所で家庭を営み、家族を持ち、地域とつながるといった人間関係の構築などから成り立っています。ここからSDGsが広い範囲においてライフデザインに結びつきそうだということが分かることでしょう。

 

ライフデザインとSDGsの各目標
 では、SDGsの各目標とはどのような関係を持っているのでしょうか。

 例えば、「住まう」を取り上げると、持続可能な住まい方とは、国内の木材を使用して(地産地消、CO²取り込み)、家の快適性を保つための伝統的な材料・技術やパッシブソーラーなどの考え方を採りいれながら(エネルギー低使用、化石燃料低使用)、木の成長サイクルより短いサイクルで廃棄することなく長く積み続け(CO²固定)、次の世代に引き継ぐ(人と場所、世代と世代をつなぐ)という住まい方が想定されますが、これは目標7「エネルギーをクリーンに」目標15「緑の豊かさを守ろう」目標13「気候変動に具体的な対策を」目標11「住み続けられるまちづくり」に関係します。

また家庭・地域のあり方や働き方を考えることは、社会集団における多様性や公平性を考えることになるため、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」目標10「人や国の不平等をなくそう」目標16「平和と公正をすべての人に」が関係してきます。

そうした中で、ライフデザインにもっとも強く関係するのは、目標12「つくる責任 つかう責任」です。現代のライフスタイルは「つかう」ことの中に「利便性」を追い求める高度消費社会によって成り立っていて、このことが大量消費・大量廃棄を伴うものであることから、このライフスタイルを乗り越えようとするのがライフデザインの目標となっているからです。

 

生活者視点からのSDGsの必要性
 ところで、SDGsのそれぞれの目標はさらにいくつかの詳細な「ターゲット」に分かれていますが、それらは政策的視点から設定されているため、そこには生活者的な視点が盛り込まれていません。それは、個々の生活者のレベルの目標設定が現実には不可能だからという事情もあることでしょう。
 しかし、現在の世界の問題は、どこで作られたどんなものを買って、どんな使い方をして、どう楽しんで、どんな捨て方をするのか、どんな働き方をして、どう遊ぶのか、そしてどこに住んで、どんな家庭を築いて、どんな近隣関係を持つのかなど、日々の私たちの生活の結果が積み重なって引き起こされたという面が強いのは間違いないでしょう。したがって、SDGsが本当に達成できるかどうかは、これを政府や企業の問題とみるのではなく、私たち自身が「生活」に引き付けて考え、当事者意識をもって行動できるかどうかにかかっているといってもいいでしょう。
 まさにそのことを考えようするのがライフデザインですから、ライフデザインがSDGsのいずれかの目標に関係しているということよりも、そうした目標やその背景にある理念を実際の生活行動にどのように反映させるかを構想するという、SDGsの先を担おうとしているという意味においてSDGsと関係しているのです。つまり、ライフデザインは、「“持続可能性”を“生活”において実践する方法を考える」ということなのです。