理念

病気に立ち向かうこと、健康に生きること、その中心にある

「食べる」を守りきることができるのが、管理栄養士だと思います。

その管理栄養士としての自信、スキルを身につける場所を何としてでも提供したかった

———まず、このスキルアップセンターが作られた経緯を教えてください。

はい、私は島根大学医学部附属病院で管理栄養士をして、そしてここに教職で立たせていただいているんですけども、教科を見た時に、この教科で私が島根大学医学部附属病院でやっていた臨床、あるいは地域にも出ていたんですけど、地域のことをできるスキルを4年間で身につけて、本当に世に出ていく事ができるんだろうか?って思った時に、卒後教育は必要だと思いました。

病院とか学校に入る子達は、そこで学んで、そして自分で力をつけて、次のステップに行くんですけども、多くの管理栄養士は国家資格を取り、そして自分の力で、一人の人を食支援で守るってことをしていかなきゃいけないんだけれども、本当にそのままで出ていけるんだろうかっていうことにすごく懸念がありました。

で、卒後教育をやらなければいけないって思った時に外ではeラーニングがあったりとか座学があったりとか、それから職能ごとの研修があったりとか、そういったことはすごく立ち上がっているんですけれども、一人の人を自分がきちっと生活も見て、食も見るって言う、そういった教育がなされていない、だから一人の管理栄養士として自信を持ってやっていける、そのスキルをどうやっても身につけてやりたかったという思いが先に立ったんですよね。

で、どこかでそういうことができないのかな?っていうのを友人たちと話し合った時になかなかそういうハードの面でそういう場がない。
それから、そういう一人の管理栄養士を育てるためには、足りてない知識をどうやって注ぎ込んでいくか?他の職種の人達も呼ばなきゃいけないですし、今トップで走ってる先生の力も借りて知識を得なければいけない・・・

最初は、そういうことが本当にできるんだろうか?仲間内で話した時にすごい難しかった。
でも、この大妻が場所を提供してくれた。そしてこの場は、東京都のど真ん中にあるということで講師の先生達も来てくださっている・・・

だから、やらなければならない!今進めなければいけない、今は止められない。
そう思っているんです。
管理栄養士として活躍していく者たちを出していかなきゃいけないと思っています。

そして、スキルアップセンターを4年、走らせました。
周りからそのやり方をよくないんじゃないか?ここから育った管理栄養士では足りないんではないか?という言葉が出れば、私は止めます。でも今は止められない。このセンターを続けていこうと思っています

———今、先生が思う管理栄養士の役割とは??

4年間の学びの中で、食に対してあらゆることを学びます。
食材のことも学びます。調理のことも学びます。そして、人がその食物を摂取した後の栄養の消化吸収、代謝も学びます。そして、人の気持ちを考えて食べさせる、そのことも学びます。

そのことが全て身について、生活の中に「食」ということを落とし込んで、その人の生活を守るっていうことができるのって他の職種にあるかなぁ?って思うんですよ。

状態を考える人はいるかもしれない、消化吸収代謝をうまく考える人はいるかもしれない。
でも、全てを統合して考えて、そして最終的に美味しいと言って、食べてくれることを提供できるのは管理栄養士しかいないかもしれない。

そして、患者さんが一口食べてくれた、終末期の人が一口食べてくれた、その事をこんなに嬉しいって思う職種は・・・その喜びを誰よりも、どの職域よりも感じている者がやっぱり管理栄養士だと思うんです。

———印象に残っている管理栄養士としてのエピソードを教えてください。

私、島根大学にいた時にですね、管理栄養士として朝早くから夕方まで仕事をしてて、さらに家まで車で5分の距離だったものですから、5分でお家に帰って、子供たちも独立していたので食事をして、また大学に帰って、朝まで仕事をやっていたんですね。

その時にね、すごく管理栄養士としてこの入院患者さんの一人一人を見つめている、本当に良い仕事をしたと思ってたんですね、それが本当に生き甲斐だったんです。
でも、気づいたことがあるんです。

管理栄養士として一番大切なことは、自分が健康であること、心と体が健康であること、そうしないと人に優しくなれない、優しくなれないと、人は食べてくれない。
そういう事に気付いたんです。

その時、私は島根大学で管理栄養士室長として、そこにいたんですけどもある一人の男性管理栄養士の方とうまくやっていけなかった。それにすごく後悔があって・・・
その時にすごく自分に優しくなれてなかったので、あまりにも患者に集中しすぎて、自分に優しくなれてなかったので、その人をすごく傷つけたという後悔の念があって・・・

管理栄養士であること、それは自分の健康とか自分に優しくなるということそれがすごく大切だと思っている。

だからまずは本当に自分をしっかり大切にして、自分を守る、自分の大切な人を守る、自分の家庭を守る

そういった生活の中から「食べるを守る」ことはどんなことかって気付くんだと思うんです。

———患者様とのエピソードで思い出深いものはありますか?

私が大妻に来る前に癌専門の栄養士としてやっていたんですけど、それをNHKの方が取材をしたいとおっしゃって、ある患者さんに、お酒のゼリーを出してほしいとおっしゃったんです。

その患者さんはいつも笑顔で、緩和の病棟にいらした患者さんで、いつも笑顔で私達が出すもの食べてくださったので、その患者さんにお酒ゼリーを食べていただいた所を撮影したいっていうお話になったんです。

で、その患者さんにお願いしますって言ったんですけど、その時に主治医は「やめなさい、顔が少し腫れているし、そんな姿を家族とか友人とか知人に見せる必要ないから、やめなさい」っておっしゃたんですね。

その時にその患者さんが、私に言ってくださったことは「川口さん伝えたいことがあるんでしょ?緩和病棟でこうやって動く事もなかなかままならなくなった自分たちが、食べるという事を管理栄養士さんたちが守ってくれている・・・これがどんなことなのか川口さん伝えたいんでしょ?」って仰ってくれたんです。「だから僕はうつります、うつしてください」っておっしゃったんです。

でも午後になって高熱が出てドクターストップになったんです。で、その患者さんのところに行って「ごめんなさいね、私がそういうお願いしたから熱が出たかもしれないし、この状況では無理ね」って言ったんですけれども、その時にも患者さんが「いや僕はこんな体になって、何もできないけれど、だけど、川口さんが伝えたいことのために僕は何かができるんだよ今、だからお尻の穴でも鼻の穴でも何でもいいんだよ、僕は撮影してもらって大丈夫だよ」っておっしゃって、すごいいい笑顔で、テレビに出られたんです。

それが全国放映になって多くの反響をいただいたというのが、私の中での忘れられないエピソードのひとつです。
・・・他にもいっぱいあって、時間が足りませんね(笑)

————他にはないスキルアップセンターの良い所を教えてください

eラーニングであったり、座学であったり、そういったものたくさんある。
でも、そのeラーニングで習う・・・例えば、摂食嚥下のことだけを習う、消化吸収を習う、病態を習うっていうことだけでは、人ひとりをしっかりみて、食べるという所に導いていけないんですね。

スキルアップセンターで学べるというのはですね、一人の人間として、食べるということに繋がるところを全て網羅して、みんなで考えていくという所があります。

そして、その一人の人間を見るということは、機能性も見るし、その人の病態も見るし、メンタルの面も全部見る。

計画を立てて作り上げてもそれを口にしなければ、それは栄養というものにはならないんですけど、その適切な調理ができる、適切な調理っていうのは摂食嚥下の問題もあるでしょうし、病態の問題もあります。
それでも、どんな食事でも美味しい料理を作り上げられる所まで、このセンターでは学ぶようにしています。ですので、調理実習はかなり時間を割いて、一人ずつ結構厳しく(笑)学べるような形にしています。

ですから、皆さんがきちんと患者さん、利用者さん、それから重症化予防のための病態を見て、食べるものを作り上げ、そしてその人がきちんと食べられるところまで、受講者をスキルアップさせていくのがスキルアップセンターです。

————どんな方が学ばれに来ますか?

みんなちょっと不安があるんですよね。
管理栄養士として働くって、一人で働くことが非常に多いし、自分はこれで出ていけるんだろうかっていう不安、それから自分はどうやって繋がりを持ってくんだろうか?って不安に思ってる人が多いと思います。

それから、どうやって学べばいいのか、学び方がよくわからないっていう人たちも多くやってきます。

あとは繋がりがないんですよね管理栄養士って。
ですから、つながりを求めてくる人もいます。全国からいろんな方が来てくださってます。

あとは、スキルを上げるっていうことよりも、自分が不安に思っていることは何なんだろう?
その不安を解消するには何を学べばいいんだろう?どうしたらいいんだろう?っていう所をつかめてない人たちが多いと思いますね。

そういう人たちが座学だけで一つずつ手に入れても、それが解消できないんです。
そういう所を求めて来ているんだ、と思います。

また、管理栄養士のプライド(誇り)はあるんです、調理技術があったりとか国家資格ですし、プライドはあるんですけれども、でも管理栄養士は料理を作る人かっていうと、そうではなくて、その人の病態を見なきゃいけないんです。そうすると知識が必要なんです。
他職種の方に提案して行かなきゃいけないんですね。国家資格を持った一医療者ですから。そこで提案しなきゃいけないけれど、その知識が不足している人も多いかと思います。

それから、知識を得ようとしたら、やっぱり外に出て行かないと得ることはできないんです。
でも閉じこもってしまいがちな人が非常に多い。
自分でコツコツ勉強します、それから自分の周りの知り合いにいろんな知識をいただいて、さらにスキルを上げますっていう、そういう人たちが多いんですけど、それだけではなくて、やはり外に出て行って色々な体験をする、今必要なことを肌で感じるっていうことが必要だと思うんです。

そして、常に医療は進歩しているから、それを追いかけていく向上心も必要だと思うんです。
私が修了者の人たちに最後に伝えているのは、皆さんはプライドがあるかもしれない。でもプライドに知識を持ちなさい、知識を得るために、常に新しいこと、新しいものに向かう向上心を持ちなさい。
ということを伝えるようにしていて、プライド、知識、向上心、この三つを兼ね備えた人がやっぱりこれから必要だと思うし、そこが足りないから不安だと思うんです。

————スキルアップセンターの特徴を教えてください。

まずスキルアップセンターのホームページを見られた時に、受講料が高いなって思うかも知れないんですけど、このスキルアップセンターには多くの講師の先生を迎えることができています。

管理栄養士のトップランナーもほぼ集まってきます。
それから、今在宅地域で一番問題となっている病態は何かっていう時代に即応した私たちが得なければならない知識をちゃんと伝えてくださる医師も非常に多くいます

それから、いろんな職種の先生達もグループワークに入ってくださっていて、ものすごく多くの講師の先生たちが集まっています。さらに、その中で少人数制で行っていますので、その先生方と本当に今の自分をどうしたらいいのか、今自分が疑問に思う事を親密に話し合うことができます。

また、今回はオンラインが中心になるかと思うんですけれど、5日間あります。
その5日間の間に実践的にやってる人達が、ほぼ全て集まってきてくれます。
その人たちがずっとその受講者の側に寄り添ってくれます。

自分達もいろんなことを体験して来て、そして色々苦しんで来たり、悩んで来たりしたこともあると思うので、質問に答えるだけでなく、受け答えを見ながら、あの受講者は、こういうとこに不安があるんだな、こういう悩みがあるんだなっていうのちゃんと見抜いて、そこにずっと支えになろうと寄り添っていける所はこのセンターならではだと思っています。

また、これは私がスキルアップセンターを立ち上げる時に予測してはいなかったんですけども終了者同士が独自の研修会とコミュニティを作っています。

ホームページも自分たちで開設していて、修了者たちのほぼ8割ぐらいが繋がっています。
そして全国から来ていますので、その全国から来た者たちが地域地域で活躍しています。
自分たちが地域でこれから何をしようという発展的な思いでこのコミュニティはつながっていて、悩みがあるときにもその者たちがみんなで答え合うというふうな、これは本当にこのスキルアップセンターならではの大きな収穫だったんだなぁと思っています。

————受講を考えている人へ

スキルアップセミナーを受講をしようかなーって考えてくださる人達に私が言えるのは、スキルをつけようって思うのも大切です。でも今思い悩んでいること、これから自分はどこに行くべきなのか?自分の今の立ち位置、あるべき姿が分からなくて悩んでいる人、そういう方達に、ぜひここに足を運んで来ていただきたいと思います。閉じこもっていないで、ひたむきな思いでここで一緒に学んでみましょう。

私達は仕事や夢を実現し、心の豊かさを持ち、管理栄養士である自分を信じる道をみんなで歩もう、と毎回終了者にはお話ししています。

是非皆さんも、ここで共に学んでみましょう。以上です!

————-最後に、先生にとって管理栄養士とは??

管理栄養士とは、病気に立ち向かうこと、健康に生きること、その中心にある「食べる」を守りきることができるのが管理栄養士だと思います。