ライフデザイン学科 研究室ブログ LABORATORY BLOG

2022年度 京都・若狭プロジェクトの実施(その3)
2022年12月23日

 

〈3日目〉

 

◇若狭町モニタープロジェクト(続き)

3日目は早朝に定置網漁の水揚げ見学をし、瓜破の滝や熊川宿散策、年縞博物館を訪れました。

 

◎水揚げ見学

 朝早く、世久見漁港を訪れ、定置網漁で獲れたばかりの新鮮な魚たちを、漁師さんたちが船から引き上げ、てきぱきと種類ごとに仕分けていく様子を見学しました。一般に人向けに市場を開くこともあり、私たちのほかにも見学に来ている人が多くいました。

 定置網漁とは、網を定まった場所に設置しておき、回遊魚を誘い込んで獲る漁法のことで、まき網漁法などのように魚の過剰漁獲をすることがなく、また底引き(トロール)漁法のように海底を荒らすこともないエコな漁法だということです。こういう漁法で獲れた魚を選んで食べることが、ライフデザインの理念に適うことなのかと思いました。

 これはシイラと呼ばれる魚で、東京ではあまりみかけませんが、マクドナルドのフィレオフィッシュなどに使われているそうです。

 

◎瓜割の滝

 海から山に移動し、名水百選に選定されている「瓜割の滝」を見に行きました。若狭町の天徳寺境内奥に位置する、この「瓜割の滝」は、山間の岩間から湧き出る清泉で、1年を通して水温が変わらず、夏でも水につけておいた瓜が割れるほど冷たい事から、その名前が付けられたそう。瓜割の滝から湧き出る瓜割の水は、幾重もの地層が自然のフィルターとなり、永い歳月をかけてろ過した純度の高いミネラル成分が溶け込んだ水となっており、多くの人々に愛飲され親しまれているらしく、持参した容器に瓜割名水を汲んで持ち帰る地元の方が多くいらっしゃいました。

 瓜割の滝の周辺は、自然豊かで清らかな美しい雰囲気が漂っていました。

 

◎熊川宿

 お昼にかけては、若狭街道、別名鯖街道の熊川宿に行きました。熊川宿は、若狭と京都との交易の拠点として発展した宿場町です。

 そんな歴史情緒豊かな街並みを、語り部さんに案内していただきながら散策しました。

 熊川宿を歩いていると、生い茂っている木々が目につきます。この木はアブラギリ(油桐)といって、種子から桐油と呼ばれる油が採取されます。アブラギリは、若狭では“ころび”と呼び、桐油のことをころび油と呼んだそうです。ころびは幹が硬く、有名な「若狭塗」の研磨剤として使用されていました。切ってもすぐに生えてくるので、産業発展に活躍しました。

 熊川宿の民家の目の前を流れている用水は前川といい、豊臣政権下で若狭一国を拝領した浅野長政によって作られました。前川は生活用水として作られたため、この川で洗濯をしたり、顔を洗ったり、馬が水を飲んだりもしました。下水を流していないためとても綺麗な水が流れているのだそうです。そして雪の降る冬には、雪溶かしの水としても重宝されました。

 熊川宿に実際に足を運んでみて特に印象的だったことは、宿場内に電柱が全くなかったことです。日本は電柱が多く、景観に統一感がないことが問題の1つであると授業では習っていましたが、それを実際に目の当たりにすることができ、感動しました。

 このように伝統的な町並みを残す熊川宿は、平成8年に国の伝統的建築物群保存地区に認定されました。

 

 一通り散策した後は、熊川宿の中で昼食をとりました。何組かに分かれ、組ごとに同じメニューを頼み、この土地らしさが感じられるかなど、見て食べて感じたことを評価させてもらいました。鯖寿司やサバサンド、そば、だんごなどを熊川宿の風景とともに堪能しました。

 最後に、道の駅若狭熊川宿の入り口で行われていた熊川マルシェを見学しました。こちらでは貴重な熊川葛からできた葛まんじゅうをいただきました。そもそも葛とは何かを知らない学生たちも多く、興味津々な様子で葛まんじゅうを楽しんでいました。

 こちらのマルシェでは、私たちの先輩方がラベル開発に携わったうめゼリー「うめみごこち」も売られていました。

 

◎福井県年縞博物館

 熊川宿を後にし、三方五湖の1つ、三方湖のほとりに建てられた年縞博物館を訪問しました。

 「年縞」といっても何のことかわからないことと思いますので、まず年縞について私たちが学んだことをご紹介します。年縞とは、「長い年月の間に湖沼などに堆積した層が描く特徴的な縞模様の湖底堆積物」のことで、縞模様は季節によって違うものが堆積することで、明るい層と暗い層が交互に堆積し、1年に1層形成されます。

 この博物館にある年縞は福井県若狭町の景勝地、三方五湖の一つ水月湖で採取されたものです。水月湖は年縞が形成される環境として「奇跡」と呼ばれるほど理想な湖で、その理由として、①直接流れ込む河川がない、②湖底に堆積物をかき乱す生物が生息していない、③ゆっくり湖底が沈降を続けているため時間が経過しても埋まらないなどが挙げられます。その結果、水月湖の年縞の長さ(深さ)はなんと45mにもなり、そこには7万年分の歴史が保存されることになったのです。そして、世界でも稀なことに、水月湖の年縞には1年の欠落もないことから、歴史の年代決定のための国際標準の「ものさし」に採用され、世界の考古学、歴史研究の発展に大きく貢献することになったのです。

 年縞博物館には、実際に45mの年縞をまっすぐに並べた「年縞ギャラリー」が設けられており、7万年の経過を実感することができます。時々混じる火山灰から、それが大山、富士山、阿蘇あるいは喜界島ほかのどこからきたか、いつ噴火は発生したのかを正確に知ることができます。

 学芸員の解説がなかったら、ただの縞々模様だと思ったかもしれませんが、丁寧な解説のお陰で人類登場以前の地球の歴史に大いに興味をもつことができました。