ライフデザイン学科 研究室ブログ LABORATORY BLOG

古民家カフェ探訪 第3弾
2021年2月22日

 ライフマネジメントゼミでは、ライフデザインの理念を空間として象徴しているような古民家カフェを訪れ、オーナーの思い、インテリアへのこだわり、食への配慮、地域とのかかわりなどを尋ねるプロジェクトを開始しました。そのシリーズ第3報をお届けいたします。


♣ 町家カフェ むさしや(千葉県印西市) ♣

 今回訪れたのは、千葉県印西市木下駅から徒歩三分ほどのところにある「町家カフェむさしや」さん。嘉永2年頃の建築と云われ、明治末期から大正初めに行われた利根川の堤防改修工事に伴い、大正3年現在の地に移転されました。後に、印西市では初めての登録有形文化財に指定されました。歴史、町、人、生産者との繋がりを大切にしている想い、食材へのこだわりについてインタビューしてきました。

 

♢カフェのコンセプト、方針は?

 一皿にできあがるのに、色々な命と携わっている人(農家の方たちなど)とお客様を繋げたい。生産者のことを料理で伝えたいから、朝お客様と一緒の料理を食べ、一品一品シェフから説明を受ける。それをお客様に伝えている。「良いものを良い状態で素材を活かした状態で出す」ということを方針としている。

 

♢カフェのこだわっているポイントは?

 食材がどこから来て、どのような思いで作られているのか、生産者様の背景も一緒に提案していること。食材を選ぶときは、生産者様に直接会いに行き納得のいく食材を選んでいる。

 

♢家具や食器などのこだわりは?

 時代をつなぎたい、歴史を残したい、古民家を残していきたいという思いを込めて、家具は登録有形文化財「武蔵屋」のものを使用している。食器はシェフのお母さんから受け継いだものや、買い合わせたもの、蔵にあったものなど、様々なものを使用している。

 

♢どのような客層の方が多いか?

 改装直後は年齢層が高めだったが、いろいろと変えていく中で幅広い年齢層に親しまれるようになってきた。現代はSNSやブログ等の影響により、幅広い年代のお客様がご来店。お子様連れも多く、特にお子様連れの方は食材にこだわっている事が多い。

 また、最近は、以前にはお店を知らなかった近所の方も増えてきている。今後のターゲットは、千葉ニュータウンの都心からくるお客様を考えている。

 

♢食材へのこだわりは?

 有機野菜にこだわっている。農薬は健康被害をもたらすだけでなく、里山の生態系など自然を壊してしまう可能性があるから。虫や雑草への対処が大変であるため無農薬栽培をしている農家はほとんどなく仕入れが大変だが、次の世代へと里山の風景を残していくために無農薬にこだわっている。

 

♢内装のこだわりは?

 建物ができた時の「そのまま」を大切にしている。戦中の頃から残っている妻の父の書き物なども、そのまま置いてある。

 

♢なぜ古民家カフェにしたのか?

 「時代を繋げたい」という想いあり、昔があるから今がある、そして今を次に繋げられるといった点から、できる限りの形を残して日本人の知恵を伝えていきたいという想いがあった。また、ホームページの最初にもあるように、ご主人が考えた言葉の「歴史をつなぎ、街なかをつなぎ、人をつなぐ」をもとに活動をしている。シェフにも同じような想いがあり、歴史やお客様との繋がり、生産者様や街なかを繋いでいけたらという考えを持っている。

 

♢名前の由来は?

 建物は元々「武藏屋」という名前の旅館で、古民家カフェをオープンする際もそのままの名前にした。

 

 

お忙しい中、美味しい料理や素敵なお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。

 

 

♢インタビューを終えて

 皆さんは「以和為貴」という言葉を知っていますか?これは、聖徳太子が制定した十七条の憲法に出てくる言葉です。海外で生活をしていたシェフが、外から見た日本についての話をしてくださる中で出てきた言葉で、協和協調は一人一人が「おかげさまで」という気持ちを持つことで成り立つのだという教えとして受け取っているそうです。

 ただ美味しいものを食べていただくのではなく、生産者などとの繋がりの中で、関係する全ての人に対して「おかげさまで」という気持ちをもって接し、感謝しながら料理を提供している姿勢に共感を覚えました。

 また、外から日本をみていると、現在の日本人は日本の良さを忘れてしまっているのではないか、むしろ外から日本をみる海外の人のほうが日本の文化や伝統を知っており、日本の宝物を認識しているのではないかと感じられたそうです。

 だからこそ帰国後は、昔の建物、人と人のつながり、自然との共生、モノを大事にする心など、これまでの日本人が培ってきた大事な宝物をこの古民家カフェを通じて次世代に伝えていこうとしておられるのだろうなと感じました。

 

聞き手・書き手:泉館、紺野、松本

訪問日:2020年12月11日